自律神経失調症に鍼灸治療が適している理由
自律神経失調症とは
交感神経と副交感神経のバランスが乱れる事で症状が発生する自律神経失調症は、西洋医学での根治は難しいと言われています。
そんな自律神経失調症には、鍼灸治療が効果的だとも言われているのです。鍼灸治療にはどのような効果があり、なぜ自律神経失調症に効果を発揮するのでしょうか。
交感神経と副交感神経
私たちは普段、手や足などを自分の意思で動かしています。物を取ろうとする時や目的地まで移動する時、物を食べる時など、自分で動かそうと思って体を動かしているのです。この時に必要となる神経を、体性神経と言います。ですが、これとは別に無意識で動いている部分もあります。呼吸や食べたものの消化・吸収、発汗、体温調節などは普段意識していないでしょう。このような無意識の活動は、私たちの生命を維持するために大切な活動ですが、これを司っているのが自律神経です。
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経は体が活動している時や緊張している時、驚いた時などに優位になります。このような時は体が機敏に動く必要があるので、血流は筋肉へ多く流れ、血管を収縮し活動的になります。また、昼間に活発になる性質があります。これに対して副交感神経は、休息している時やリラックスしている時に優位になる神経で、血管を拡張して血行を良くし、精神活動を休息に導きます。こちらは、夜に活発になります。
この交感神経と副交感神経がバランスよく活動する事で、私たちは活動と休息のバランスを取り、体の働きを安定させることが出来きます。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れると
交感神経は昼間に優位になり、副交感神経は夜に優位になります。ですが、最近では24時間営業のお店も増えていますし、仕事や勉強などで夜遅くまで起きている人も少なくありません。このような生活を続けていると、交感神経と副交感神経の交互に機能する神経活動のバランスが崩れてしまいます。
また、体を酷使する肉体的なストレスや、人間関係や将来への不安などの精神的なストレスを継続的に受ける状況が続くと、交感神経ばかりが優位になる状態が続いてしまいます。このような状態でも、交感神経と副交感神経のバランスは崩れてしまうのです。このような状況が続き、頭痛やめまい、不眠症などの症状を起こしてしまうのが自律神経失調症です。
自律神経失調症の症状
症状には、数えきれないほどのものがあります。
体の症状のうち、頭の症状として頭痛や脱毛、圧迫感、目の症状として疲れ目、まぶたの痙攣、ドライアイ、涙目、眼精疲労、耳の症状として耳鳴り、耳に何かが詰まっているような閉塞感、平衡感覚の狂いによるめまい、のどの症状として異物感、イガイガ感、圧迫感、口の症状として口の渇き、痛み、味覚障害、唾液の異常分泌、その他にも動機や胸の圧迫感、立ちくらみ、呼吸困難、胃炎、食欲低下、過食症、吐き気、かゆみ、冷や汗、などがあり、数え上げるときりがありません。
また、情緒不安定、人間不信、不安感、無気力、ネガティブ思考、集中力の低下などの心の症状が起こる事も
あります。
自律神経失調症の症状の特徴として、ずっと同じ症状が続くのではなく、症状が変わっていくという事が挙げられます。症状の程度も日によって変わる事があるため、気のせいだと思われてしまう事も少なくありません。これらの症状は、病院で検査をしても異常がない事が多く、不定愁訴を自律神経失調症として片づけてしまう事も多いのです。不定愁訴とは、病院で検査をしても原因がはっきりしない体の不調の事です。
自律神経失調症は西洋医学では難しい
西洋医学とは
大きく分けると、医学には西洋医学と東洋医学があります。これは医学用語ではなく、ただの俗語なのですが、西洋医学とは、基本的にその言葉のとおり欧米において発展した医学を指します。
西洋医学が得意とする治療
西洋医学は、攻撃型の医療と言われ、外傷や感染症などを治す事を得意としており、外からの原因に強い医療と言えます。病巣の切除によってその病気の原因を物理的に排除したり、前もってワクチンを投与する事で伝染病の感染を防いだり、薬によって病気を抑えたりする事を得意としています。体に明らかな異常が見つかった場合に、その原因を突き止め、治療する事に高い効果を発揮するのが西洋医学と言えるでしょう
西洋医学と自律神経失調症
自律神経失調症は、検査をしても体には明らかな病気の原因が見つからない病気です。中には、そういった様々な不定愁訴の総称を自律神経失調症と言う医師もいるのです。交感神経と副交感神経のバランスの乱れによって起こる自律神経失調症は、検査をしてもその症状の原因となる物理的な病気は見つかりません。
自律神経失調症では複数の症状が表れますから、西洋医学ではその症状ごとに薬を処方する事になります。ですが、自律神経失調症の症状は日々変化していきますから、何種類もの薬を服用しなくてはいけない事になりますし、薬のおかげで症状がなくなったのか、別の症状に変化しただけなのかもわかりません。そのため、西洋医学と自律神経失調症は相性が悪く、あまり効果を発揮できないのです。
自律神経失調症と鍼灸治療
鍼灸治療とは
鍼灸治療とは、その名前のとおり鍼やお灸を使って行う治療の事です。中国医学などで用いられる治療法の一つで、体に鍼やお灸で刺激を与える事で健康増進を目指したり、多様な疾病に対応したりする事を目的としています。
漢方薬などを用いる生薬方と共に東洋医学の主流とも言える治療法で、日本では歴史的には盲人がその治療を担っていました。
西洋医学のように、体の悪い部分を特定してその部位を治すのではなく、体全体を診て血流の改善などを促す点が特徴です。
鍼灸治療の効果
鍼灸治療は、基本的に自然治癒力を高める治療だと言われています。
人間の体は、弱ったところや悪いところがあると、体が本来の正常な状態に戻ろうとして、自分の力で治そうとする力を持っていると言われています。これを自然治癒力と言います。鍼灸治療では、体の不調に効果があるとされるツボに鍼やお灸で刺激を与え、自然治癒力を高めて血液循環や内臓、免疫などの働きをその人本来の正常な状態に戻すように体に働きかけることで、体の不調を改善していくのです。
このような鍼灸治療は、神経痛や心臓神経症などの神経に関わる体の不調や、気管支炎、ぜんそく、リウマチ、五十肩、風の治療および予防、胃腸病、肝機能障害、バセドウ病、糖尿病、性機能障害、生理痛や月経不順など、多くの辛い症状や病気に効果を発揮します。
鍼灸治療で自律神経失調症が改善する理由
東洋医学では、自律神経失調症という病名はなく、それは臓器の乱れだと考えられています。
そして、鍼灸治療は体全体のバランスを診る事を基本としています。西洋医学では一つ一つの部位や症状に焦点を当てますが、東洋医学では全身を診るのです。
その中でも鍼灸治療では、内臓や脊髄などの中枢神経の機能低下を改善し、交感神経と副交感神経のバランスを整えて体全体の血流の改善を働きかける事を主眼としています。
これはまさに、交感神経と副交感神経のバランスが乱れている自律神経失調症に適した治療だと言えるでしょう。ですから、鍼灸治療は自律神経失調症に効果的なのです。
まとめ
自律神経失調症は、西洋医学としては臓器には異常はないけれど、とても辛い症状があるという曖昧な状態に
なります。
病気の場所や原因を具体的に特定して、それに対する治療を行う西洋医学には、とても扱いづらい病気なのです。
体全体を診る鍼灸治療は、そんな自律神経失調症に高い効果が期待出来る治療法です。
自律神経失調症に苦しんでいる方は、一度鍼灸治療を試してみるといいかもしれません。